会長挨拶
会長
中野 時衛
(なかの ときえ)
わが国では、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災の被災経験から、耐震に対して構造体は勿論のこと、天井など非構造受けた材や基礎・地盤、さらには津波を含めた総合的な対策の重要性が言われています。その後の熊本地震、北海道胆振東部地震での木造建物の被害が発生しました。
今後も東海・東南海・南海地震の巨大連動地震動や首都直下型地震などが懸念されていますが、今年は特に、未曽有の被害を受けた関東大地震の100周年にあたり、既存構造物の総合的な耐震診断・耐震診断・改修の普及を一層推進する必要があります。
当構造調査コンサルティング協会は1988年の発起人総会を契機に、翌年設立されました。
以来、建築・土木構造物の構造設計、耐震診断・補強設計の評価のエキスパート企業集団として活動を続け、2009年に一般社団法人に移行してからは2014年に一級建築士事務所登録を行ったほか、天井における耐震評定の仕組みを構築したことで官公庁への技術支援など活動の場を拡大しました。
前職の電電公社・NTTファシリティーズでは 主に通信用建物と事務所ビルの新築物件の構造設計を担当しましたが、1981年の新耐震設計法施行に伴う既存不適格建築物としての通信用ビルと無線鉄塔の診断・補強と同時期に起こった想定東海地震の地震強化地域内の通信用建物・無線鉄塔の診断・補強にも力を注ぎました。
協会の今後の活動方針としましては、従来の診断・補強を継続するとともに別の新しい業に関わる業務を展開したいと思います。例えばドローンを用いた調査・点検業務のコンサル及び現在国を挙げて取り組んでいるカーボン・ニュートラルに関わる省エネ・再エネに関する業務などを考えております。
従来の診断・補強に関わる業務については、最近都から打診のあった極めて耐震性能が低いピロティ建物の診断・補強に関わる業務、耐震性能が不十分な怖れがある2000年基準による木造住宅の診断・補強に関わる業務も新しく予想されるので取り組んでいくしだいです。
最後に、当協会の会員増強も重要な課題であり、有意義な情報を得て明るい展望を持てるような協会をアッピールし、会員を増やしてゆきたい所存でございます。
2023 年 6 月
構造物評定委員長挨拶
東京理科大学名誉教授
構造物評定委員会委員長
松崎 育弘
(まつざき やすひろ)
構造調査コンサルティング協会は、建設業界においてレトロフィット関連技術を耐震不足の建 築物に適切に駆使したり、また新しい開発に取り組み、普及に尽力している先駆的な設計事務所 並びに企業から構成されています。
1995年の阪神・淡路大震災直後、協会内に常設された構造物評定委員会は、これまでに廣澤雅 也委員長、槇谷栄次委員長のご尽力により、学校、庁舎、集合住宅など建築構造体の耐震性能評 定で多くの実績を残してきました。
また、廣澤雅也委員長が中心となって作成された耐震補強設 計マニュアルは、日本建築防災協会の耐震改修指針と共に、耐震改修設計に大きく貢献しています。三代目の構造物評定委員長を担うにあたりまして、
この分野での活動につきましては、しっかり対応してゆく所存であります。
2011 年の東日本大震災では、多数の建築物の非構造部材が損傷を受け、その中でも大規模な 天井を有する建築物において、脱落する被害が多く報告さてれいます。
この天井脱落を防止する ことを目的とする「特定天井」に関する法律が平成 26 年 4 月 1 日に施行されました。これを受 けて、構造物評定委員会ではいち早く、
天井耐震の工法評定および個別評定を実施し、これまで に比較的多くの実績を残してきました。全国には、改修が必要な各種ホール等の施設がまだ多く 残されています。
このような状況を踏まえて、今後も天井耐震改修評定を進めてまいります。また、建物の総合耐震という観点から、天井に限らず建物内の設備機器類の耐震据え付け部等における耐震性確保についてのサポート・アドバイスも積極的に行ってゆきたいと思っています。
以上、今後は建築物を総合的かつ多様性に富んだ対象物との視点に立って、積極的な活動を進めて行きたいと思っております。
2019 年 6 月